現在はイベントの時代である。
イベントは、時代と空間を再構成することで、人々に新しい経験や感動をもたらし、新たな価値を創りだし、長期にわたる文化創造の推進力となった。
イベントは、独立化した人々を、再び交流とコミュニュケーションの場に呼びもどす統合装置として、機能してきた。イベントは、コミュニティの賊活剤として、地域振興の起爆剤として、企業活動の活性剤として、社会の変化を推進する原動力となってきた。こうしたイベントの社会的影響範囲の拡大にともない、その費用対効果、効果の持続性、環境との共生など、多面的な論議を呼び起こしている。さらに、イベントの性格を変えようとしているヴァーチャル・リアリティ技術や、マルチメディア、情報ネットワークの発展と普及は、イベントの理論家やノウハウ集積の必要性として、あらためて緊要な課題となってきた。イベント学の必要性である。
イベントは、限りなく複雑多様であり、一義的な定義が困難である。そのため、既成科学の方法によるさまざまな「イベント学」構築の試みを困難にしてきた。既成科学の方法とは、客観性と決定性を前提に、対象を要素に分解して、精緻な論理によって知識の体系化をめざす試みである。
われわれがめざす「イベント学」は、既成科学とは異なる道を歩むべきものと考える。
すなわち、理性と情感、論理と直観、イメージと行動など、人間や社会のもつ多元性や複雑性、不確定性を認めつつ、自ら関わり合い、新しい価値を創りだしていく知と、そのプロセスを追う学、つまり「臨床の知」あるは「デザインの知」を求め、止まるとことのない創造をくり返す。
それが「イベント学=Eventology」である。
こうした新しい学を開発し、育てるための交流と創造の場として「イベント学」の設立を決意し、広く有志の参加を呼びかけることとした。
「イベント学」は、イベント研究者のみならず、さまざまな分野の研究者、技術者、専門家や実務者が、経験や知識の多少にかかわらず参加し、積極的な相互作用を通じ、「異質な知と技能のメルティング・ポット(るつぼ)」となる学会である。
こうした認識のもとに、われわれは、イベント研究の推進と、諸科学横断的な討議・交流の場つくりをめざし、研究者やイベント業務にたずさわる方々にご参加いただくとともに、有志企業・団体のご協力を賜り、「イベント学会」を設立することとしたい。
1998年3月